ドゥネーヴ&シュトゥットガルト放送響によるラヴェルの≪マ・メール・ロワ≫全曲を聴いて
ドゥネーヴ&シュトゥットガルト放送響によるラヴェルの≪マ・メール・ロワ≫全曲(2014年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
明瞭な筆致による、明晰で精緻な演奏が繰り広げられています。エッジが立っていて、シャープ。鋭敏な演奏ぶりによって築き上げられているラヴェル演奏だとも言えそう。
それだけに、曖昧模糊となるようなことはなく、現実味を帯びた音楽が鳴り響いています。
とは言え、硬質な音楽になっているという訳ではありません。必要十分なふくよかさが備わっていて、柔らかみを帯びてもいる。しなやかな演奏ぶりとなってもいる。
そのようなこともあって、フランス的な「薫り」が十分に感じられます。このバレエ作品ならではの、メルヘンチックな風情にも不足はなく、親しみやすさや暖かみが滲み出ている。更には、細密な音楽づくりの先からエレガントな佇まいを感じ取ることのできる演奏だとも言いたい。
見通しがクッキリとしていて、かつ、詩情性も十分な演奏。そんな、ユニークな魅力を湛えているラヴェル演奏だと言えそうですが、この作品の魅力を誇張なく味わうことのできる演奏にもなっている。その辺りに、ドゥネーヴの音楽性の豊かさが感じられます。
なんとも素敵な≪マ・メール・ロワ≫であります。