シューリヒト&バイエルン放送響によるブラームスの交響曲第4番を聴いて

シューリヒト&バイエルン放送響によるブラームスの交響曲第4番(1961年録音)を聴いてみました。

シューリヒトは、芸風の幅の広い指揮者であると考えています。或るときは、淡々と音楽を進めながら、そこはかとない滋味を表出するような演奏を行う。或るときは、感情を爆発させながら、ドラマティックかつロマンティックに連綿たる音楽を奏で上げてゆく。
このブラームスでのシューリヒトは、明らかに後者であると言えましょう。というよりも、セッション録音で、ここまで感情を露わにするシューリヒトも珍しいのではないでしょうか。
音楽はうねりにうねりながら、渦巻くように進められてゆく。とりわけ、最終楽章での演奏で、そのような傾向が高くなっている。とは言いつつも、全編を通じて、ホットでいて、彫りの深い音楽が奏で上げられています。そのうえで、克明で、かつ、逞しい演奏が繰り広げられている。
しかも、音楽が粘り気を持つようなことがないのが、いかにもシューリヒトらしいところ。恬淡としている、と言うのとはまた違うのですが、ドロドロとした感情が渦巻くようなところが無い演奏となっています。とても端正でもある。更には、毅然とした態度で音楽に向かい合っていると言いたくなる。それでいて、巧まざるロマンティシズムが滲み出ているのが、なんとも見事。
バイエルン放送響との共演というのも珍しいですが、オケがまた、誠に機能性が高く、濁りのない響きをしているのが、この演奏の魅力を大いに引き立ててくれています。その演奏ぶりは、頗る精緻でもある。

シューリヒトの妙技を堪能しながら、その奥深さを痛感することのできる、素晴らしい演奏であります。