アバド&ウィーン・フィルによるブラームスの≪ハンガリー舞曲集≫全曲を聴いて

アバド&ウィーン・フィルによるブラームスの≪ハンガリー舞曲集≫全21曲(1982年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

聴いていて心躍る快演であります。
なんという躍動感でありましょうか。音楽が生彩感に溢れている。颯爽としてもいる。そして、しなやかに、かつ、豊かに息づいている。
ドラマティックにして、エネルギッシュ。とても熱くもある。スリリングでもある。それでいて、これっぽっちも荒々しさは感じられません。それどころか、全編を通じて、驚異的なまでに美感が保たれている。そして、「生きた音楽」が奏で上げられている。とても率直でもある。実にフレッシュで、ヴィヴィッドな音楽が、ここにはあります。
表情は、細やかにして濃やか。そう、表情が千変万化してゆく演奏となっているのであります。しかも、全ての表情が、曲想に適ったものであるとしか言いようがない。
このような演奏が可能になったのは、アバドの類まれな音楽性の豊かさと、音楽への情熱ゆえなのでありましょう。
更に付け加えれば、ウィーン・フィル持ち前の美音と、反応力の高さや表現力の幅広さや、演奏上の語彙の豊かさや、といったものの賜物だとも言えそう。そう、ここでのウィーン・フィルは、いつもの彼らに増して、実に魅力的な演奏を繰り広げてくれているのであります。それはもう、惚れ惚れするほどに美しくて、しなやかで、表情豊かな「音たち」が鳴り響いている。

アバドも、ウィーン・フィルも、それぞれの美質が最大限に発揮されている演奏が、ここに披露されている。そんなふうに思わずにはおれません。
いやはや、何とも何とも素晴らしい演奏であります。