ドゥダメル&ロス・フィルによるアイヴズの交響曲第2番を聴いて

ドゥダメル&ロス・フィルによるアイヴズの交響曲第2番(2020年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

快活で、親しみやすさがあって、シッカリとした推進力を伴っている演奏ぶりでありつつも、ある種の神妙さを秘めている演奏となっています。それはすなわち、アイヴズの作品が持っている二面性の現れだとも言えそう。
第1楽章は、この作品の序奏部のような役割を果たしていると看做すことができ、そこでは、敬虔にして神妙な音楽世界が広がることとなっている。沈鬱な表情をしてもいる。ドゥダメルによる、ここでの演奏では、そのような曲想が、なんの誇張もなく率直に描き出されています。そのような合間に、時おり、第2楽章を予感させるリズミカルな動きが顔を見せたりするのですが、その素振りも、過度にはしゃぐようなことはないものの、必要十分に軽やかであって、闊達な演奏ぶりが示されることとなっている。
音楽はそのまま、切れ目なく第2楽章に入ってゆくと、音楽は一気に快活なものとなり、存分に弾んでゆく。そして、伸びやかなメロディが現れたりもする。そのような音楽に対して、明朗な演奏ぶりで応えてゆくドゥダメル。しかも、足腰のシッカリとした音楽が奏で上げられている。
続く第3楽章では、情感豊かでありつつも、過剰にセンチメンタルに傾くような演奏となることはなく、屈託の無さが感じられます。スッキリとした演奏ぶりとなっている。
第4楽章は、第1楽章を思い出させるような曲想を持っていて、なおかつ、こちらは第5楽章への序奏の役割を担っている。ドゥダメルはここでも、神妙な表情をしていつつも、音楽を雄大に奏で上げてゆく。
最終楽章となる第5楽章は、この交響曲の「顔」と言えるのではないでしょうか。フォスター(1826-1864)作曲の≪草競馬≫のメロディが頻繁に現れることが、そのような思いを強くさせます。なおかつ、親近感の湧く音楽としている。ここでのドゥダメルによる演奏がまた、意気軒昂であり、かつ、開放感のあるものとなっていて、この楽章の曲想に似つかわしい。演奏ぶりが弾力性を帯びてもいる。しかも、この最終楽章の真ん中辺りに出てくる新しいメロディでは、哀愁タップリに音楽を奏で上げていて、鮮やかなコントラストを作り出してくれている。そして、エンディングに向かっての昂揚感も充分。

多面的な面白さを備えている演奏。そのような演奏ぶりを通じて、この作品の魅力をタップリと味わうことができる。
なんとも素敵な演奏であります。