ヤンセン&マケラ&オスロ・フィルによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲とプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番を聴いて

ヤンセン&マケラ&オスロ・フィルによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲とプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番(2023年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ヤンセンとマケラという、注目の共演。その演奏はと言いますと、清冽でいて、激情的なものとなっています。しかも、緊張感が頗る高い。
ヤンセンのヴァイオリンは、気負いのない演奏ぶりでありつつも、体当り的な奔放さが感じらもします。それは、献身的な演奏ぶりだとも言えそう。
基本的には端正な音楽づくりが示されていながら、生命力に溢れていて逞しい。そのうえで、研ぎ澄まされた感性に貫かれている。そのことが、この演奏に清々しさを与えている。
その辺りの知情のバランスに優れている演奏だと言えましょう。十分に奔放でありながら、繊細でもある。骨太な音楽づくりでありつつ、洗練味が感じられもする。
更に言えば、音楽を必要以上に煽っている訳ではないのですが、「音楽する熱狂」は充分。そして、凝縮度や緊密度が頗る高い。プロコフィエフの第2楽章やシベリウスの最終楽章などでは、頗る機敏な演奏ぶりが示されている。
音は、太すぎず、細すぎず。そのうえで、気品が感じられる美しさを備えている。味付けも、濃厚すぎるようなことはないものの、言うべきことを言い尽くしたものとなっている。そういったことがまた、格調の高さを生んでいる。
そんなこんなが相まって、表情が豊かであり、かつ、音楽センスの高さが漂ってくるヴァイオリン演奏が繰り広げられていると言いたくなります。
そのようなヤンセンに対して、マケラの指揮もまた、生命力に溢れていて、情熱的でありつつ、端正であって、ヤンセンの演奏ぶりにピッタリ。息遣いが豊かで、音楽が存分にうねってもいる。しかも、誇張が全く感じられない。

ヤンセンとマケラの美質がクッキリと刻まれている、鮮やかな演奏。そのことによって、聴き応えが十分であり、ここでの2曲の魅力がより一層引き立っている。
なんとも素晴らしい演奏であります。

なお、最後にシベリウスによる≪水滴≫という、1分にも満たない小品が収められているのですが、ここではマケラがチェロを弾いているというサービスぶり。マケラは音楽学校で、指揮法とともにチェロも学んでいたようです。
ヴァイオリンもチェロも、ピチカートのみで演奏されながら水の粒が表現され、可憐で哀愁に満ちたメロディアスな音楽となっています。技巧的には全く難しいものではないのでしょうが、起伏を付けた演奏ぶりに、この2人の音楽センスが感じられました。