フリッチャイ&RIAS響によるヒンデミットの≪ウェーバーの主題による交響的変容≫を聴いて

フリッチャイ&RIAS響によるヒンデミットの≪ウェーバーの主題による交響的変容≫(1952年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

明晰にして、見通しのクッキリとしている演奏が繰り広げられています。音楽が織りなしている綾が、ハッキリと見えてくるような演奏だとも言えそう。
(例えば、開始されて間もない箇所での、他の演奏では殆ど強調されることのないトランペットによる対旋律~それは、対旋律と呼ぶのもはばかれるほどの、さりげない音の動き~が、クッキリと浮き立つように演奏されていたりします。)
そのうえで、躍動感に満ちていて、エネルギッシュでドラマティックでもある。音楽が見せてくれている表情は、実に生き生きとしています。しなやかで、伸びやかでもある。
しかも、音楽全体が、毅然としていて、誠に凛としたものとなっています。
更に言えば、凝縮度が高くて、頗る緊密な演奏が展開されている。それは特に、第2曲目の「トゥーランドット」において顕著。しかも、ここでは、音楽を畳みかけてゆくような切迫感が備わっている。
その一方で、第3曲目の「アンダンティーノ」では、歌謡性に満ちていて、詩情の豊かな音楽が奏で上げられています。それでいて、このナンバーでの最後の方に現れるフルートによるオブリガートなどは、妙に勿体付けるようなことをせずに、決然とした表情で吹かせていて、そのことによって殊更に心に沁みる音楽となっている。

ドラマティックでありつつも、明晰で、凝縮度が高くて、凛とした佇まいを見せている演奏。そのうえで、多様な表情を持っていて、奥行きの深さが感じられる。
このような演奏、私は大好き。
「良い音楽を聴くことができた」という感慨が湧いてくる、素晴らしい演奏であります。