リパッティ&ザッハー&南西ドイツ放送響によるバルトークのピアノ協奏曲第3番を聴いて

リパッティ&ザッハー&南西ドイツ放送響によるバルトークのピアノ協奏曲第3番(1948年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

リパッティによるバルトークの音源が残っているというのは驚きですが、その演奏内容はと言いますと、リパッティならではのリリシズムや繊細さが前面に出たものとなっています。
バルトークならではの、土俗的でバーバリズムに溢れた音楽になっているというよりも、洗練されていて、優美さを漂わせている音楽が鳴り響いています。詩情の豊かさが感じられもする。更に言えば、夢幻的でもある。
力ずくで音楽を押さえ込もう、といったような気配は、全く感じられません。
そのような演奏ぶりに対して、ここで演奏されているのは、バルトークが書き上げた3曲のピアノ協奏曲のなかでも最も玄妙な味わいを持っていると言えそうな第3番。作品は、ここでのリパッティによる音楽づくりを、何の抵抗もなく迎え入れてくれています。と言いますか、元来この作品が持っている一面にスポットを当て、リパッティが自分のほうへと作品を手繰り寄せた結果が、このような演奏になった。そんなふうに言いたくなります。そのために、聴いていて、違和感が全くない。むしろ、もともとが、このような繊細で詩情豊かな作品であったのだということに気付かされる演奏となっている。
しかも、気品のある色彩感を備えている。そう、眩いまでの輝かしさが感じられるのであります。とりわけ、最終楽章において、その思いを強くする。
一方、指揮者のザッハーは、持ち前の精緻な音楽づくりによって、そのようなリパッティのピアノを存分にサポートしてくれている。こちらもまた、実に玄妙であります。

これまでに私が見えていなかったこの作品の魅力を提示してくれている、素敵な素敵な演奏であります。