ケンプ&コンヴィチュニー&シュターツカペレ・ドレスデンによるブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴いて
ケンプ&コンヴィチュニー&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるブラームスのピアノ協奏曲第1番(1957年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
これは、ケンプがセッション録音で遺してくれた唯一のブラームスのピアノ協奏曲録音になるのではないでしょうか。なんとも意外なことであります。しかもそれが、頑健な造りをしている第1番だというところにも目を引かれる。とても貴重なケンプの遺産だと言えましょう。
さて、ここでのケンプによる演奏ですが、堅固な音楽づくりの上に、詩情豊かな音楽を紡ぎ上げてゆく、といったようなものとなっています。そのようなケンプを、質実剛健なコンヴィチュニーの音楽づくりでサポートしてゆく。
両者ともに、誠に真摯であり、媚びを売るような素振りが微塵も感じられません。ただひたすらに、作品の内奥へと踏み込んでゆこうというような強い意志が感じられる。
そのようなこともあって、全編を通じて、適度な緊迫感が備わった演奏となっています。強靭さが感じられもする。それでいて、暖かみがある。そのような中で、緩徐楽章である第2楽章での、静謐かつ敬虔で抒情性に満ちた音楽づくりが、心に深く沁み入ってくる。
そんなケンプとコンヴィチュニーの音楽づくりに対して、SKDが持ち前の清潔感に満ちた美音を添えてくれている。凛としてもいる。しかも、ここでのSKDの響きは、芯のシッカリとしたものとなっていて、ケンプとコンヴィチュニーと同様に強靭さが感じられる。
頑健にして、抒情性に満ちていて、ズシリとした手応えが感じられる演奏。そのことによって、作品の魅力が引き立つこととなっている。
なんとも素敵な演奏であります。