アラウによるリストのヴェルディ・オペラ・パラフレーズ全集を聴いて

アラウによるリストのヴェルディ・オペラ・パラフレーズ全集(1971年録音)を聴いてみました。
収められているのは、下記の7作。
①≪リゴレット≫
②≪エルナーニ≫
③≪イル・トロヴァトーレ≫(ミゼレーレ)
④≪イ・ロンバルディ≫(サルヴェ・マリア)
⑤≪アイーダ≫(聖なる踊りと終幕の二重唱)
⑥≪ドン・カルロ≫(祈りの合唱と葬送行進曲)
⑦≪シモン・ボッカネグラ≫(回想)

私が愛してやまないヴェルディが、オペラ作品の中で書き上げていったメロディをもとに、リストが編んだピアノ独奏曲たち。作品自体が、私の心をときめかすに充分な、魅惑的なものとなっています。
と言いつつも、この7つのオペラ作品のうち、②と④は私にとっては馴染みの薄い作品。特に、④は実演での全曲の鑑賞体験は無し。
④以外の6作については、実演で接したことがありますが、②は1998年の年末に、小澤征爾さん&ウィーン国立歌劇場で観ただけ。音盤でも、あまり聴き込んでいないオペラであります。
④については、この作品を元に改作した≪イェルサレム≫を、2001年のヴェルディイヤーにウィーン国立歌劇場で観たことがあり、その観劇前に原作の④を音盤で何度か聴いたのと、≪イェルサレム≫観劇後もLPやLDで何度か鑑賞したくらい。私の身体の中に刷り込まれている音楽には、全くなっていません。

前置きはこのくらいにしまして、この音盤を聴いての印象であります。
アラウによるリストでの演奏からは、≪超絶技巧練習曲≫での音盤などでもそうであるように、暖かみやふくよかさを感じ取ることができます。威圧的になるようなことはなく、余裕を持った音楽づくりが為されている。髪の毛を振り乱してピアノと格闘しながら掻き鳴らしてゆく、といったイメージからは程遠い。更には、柔らかくて、優しさに満ちていて、隅々にまで血の通っている音楽が奏で上げられてゆく。
と言いつつも、輪郭がぼやけている訳ではなく、克明な音楽になっている。と言いましょうか、骨太な音楽となっている。しかも、攻撃的ではないものの、鮮烈さに不足はない。そして、ピアニスティックな輝きが十分。充分に豪壮でもあります。しかしながら、それらを前面に押し出すのではなく、何と言うのでしょう、奥床しい演奏が繰り広げられてゆく。決して外面的な音楽にはなっておらずにジッと心に沁み渡ってゆく、そんな、味わい深い音楽が奏で上げられてゆくのであります。

そういった演奏ぶりによって描き上げられている、ヴェルディのオペラ作品を題材に採った作品集。リストの作品の特徴の一つでもある夢想的な性格の強い音楽が、情趣深く奏で上げられています。しかも、必要に応じて、充分に壮大な音楽が鳴り響いている。更には、これは全7曲に共通して言えることなのですが、とても恰幅の良い演奏が展開されている。
ヴェルディ好きには堪らない、なんとも素敵な音楽世界が広がってゆく、頗る魅力的な1枚。そんなふうに言えましょう。