ハイティンク&コンセルトヘボウ管によるラヴェル集を聴いて

ハイティンク&コンセルトヘボウ管(RCO)によるラヴェル集(1975,76年録音)を聴いてみました。収められている作品は、下記の4曲。
≪ボレロ≫
≪ラ・ヴァルス≫
≪クープランの墓≫
≪亡き王女のためのパヴァーヌ≫

私は、1970年代から80年代中頃辺りまでのハイティンクの演奏に対して、絶大なる信頼を置いております。それが、ドイツ物であろうと、ロシア物であろう、フランス物であろうと。
このラヴェルもまた、そのような信頼を裏切らない、誠に充実度の高い演奏となっています。

ときおり、「ベルベットのような肌触りの演奏」という評言を目にしますが、この演奏は、まさにそのような言い方が似つかわしい。それはもう、実に深い光沢感を湛えた演奏となっている。このことは、RCOに依るところが大きいように思えます。
RCOによる演奏の多くは、深みがあって、奥ゆかしくて、薫り高くて、それでいて充分に重厚感があって、という特徴を持っているように考えています。そのうえで、底光りするような美しさが感じられるものが多い。
これらのことは当盤にもそのまま当てはまり、ここでのラヴェルの演奏は、普段以上に優美で格調高い音楽が鳴り響いているように思えます。
隈取りがクッキリとしていて、音像は立っているのに、音の角は滑らか。充分に鮮烈なのに、粗さは全く感じられません。必要以上に細部に拘っている訳ではなく、全体像をがっしりと掴みながら音楽を奏で上げながら、彫琢が深くて、精妙な音楽を紡ぎ上げている。そして、誠にコクが深い。まさに「妙なる」音楽が鳴り響いている。
更に言えば、各々の音や、フレーズごとの性格などに対するコントラストも明瞭である。その結果、精彩に富んだ音楽が鳴り響くこととなっている。作品自体が持っている生命力が、しっかりと放出されている音楽となってもいる。

総じて、逞しい筆致によるラヴェル演奏だと言えましょう。曖昧模糊としたところが全くなく、決然としている。しかも、実に生き生きとした表情をしている。とても端正でもある。そのうえで、芳醇な薫りが立ち込めてくる演奏となっている。
ハイティンク&RCOのコンビの美質がクッキリと刻まれている、なんとも素敵なラヴェル演奏であります。