アンドリス・ネルソンス&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるブルックナーの交響曲第0番を聴いて
アンドリス・ネルソンス&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管(LGO)によるブルックナーの交響曲第0番(2020年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
交響曲第1番が書き上げられた後に作曲された、この交響曲。当初は「交響曲第2番」という番号が付せられることが考えられていたのですが、この作品の出来栄えに自信が持てなかったブルックナーは、第2番と呼ぶことを躊躇い、作品を引っ込めたのでありました。
その後、自作の譜面を整理したブルックナーは、この作品を完全に捨て去ることができずに、「第0番」として後世に残すことにしたのでした。この作品が習作であることを記した上で。
さて、ここでの演奏はと言いますと、とても清冽なものとなっています。端正な佇まいをしていて、聴いていて、清々しい気分になる。
そのうえで、必要十分な逞しさが備わっています。生気に溢れ、躍動感に満ち、充実感いっぱいな音楽が鳴り響いている。それでいて、過度に重々しくなったり、大袈裟になったり、といったことはありません。スッキリと、そして、見通し良く纏められている。こういった点については、ネルソンスの多くの演奏からも感じ取ることができるのですが、そのような音楽づくりが、この作品には相応しいと言えましょう。
更に言えば、透明感がある。抒情性にも不足はない。そのようなこともあるからこそ、演奏全体から清涼感が漂ってきているのでしょう。野暮ったさがなく、洗練味が感じられもします。
しかも、コク深くもある。この辺りは、LGOの体質にも依るところも大きいのでしょう。ここでのオケの響きは、ややくすんだ色合いを持っているうえで、とても美しいものとなっています。
ネルソンス&LGOの美質が詰まっている演奏。しかも、この作品の魅力を堪能することのできる演奏となっている。
なんとも素敵な演奏であります。