コラール&プレヴィン&ロイヤル・フィルによるサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番≪エジプト風≫を聴いて

コラール&プレヴィン&ロイヤル・フィルによるサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番≪エジプト風≫(1986年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

清冽な演奏が繰り広げられています。夢見心地にしてくれるような美しさを湛えてもいる。
煽情的であったり、エキゾティックな雰囲気を誇張したり、といった志向を見出せるようなことは殆どありません。動的でもない。むしろ、静的であると言えましょう。そして、実に端正な音楽が鳴り響いている。誠に美しくもある。それは、響きにおいても、音楽の佇まいにおいても。
そんなこんなによって、リリックな性格が強調されている演奏となっている。エレガントでもある。いや、美麗であると言ったほうが良いかもしれません。そう、あからさまな力強さが感じられる訳ではなく、むしろ柔らかみが前面に押し出されているのですが、ここには「美麗な力感」と呼びたくなるようなものが備わっているように思えるのであります。それは特に、第2楽章と最終楽章において顕著に感じられる。そのうえで、全編を通じて、誠にしなやかでもある。
しかも、充分に華やかでもある。原色系ではないものの、煌びやかでもある。それらがまた、この作品には相応しい。

いやはや、なんとも素敵な演奏であります。