ホロヴィッツ&ワルター&ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴いて
ホロヴィッツ&ワルター&ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(1948年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
壮絶な演奏であります。
ホロヴィッツによるピアノは、轟音を立てながら猛進してゆくような趣きがある。剛毅にして強靭な演奏が展開されてゆく。
しかも、音楽のフォルムが崩れるようなことや、音楽が悲鳴を上げるようなことは、微塵もありません。毅然とした音楽がしっかと屹立している。そんなふうに言えましょう。
エネルギッシュでドラマティックな演奏ぶりが前面に押し出されているのですが、抒情的な色合いを湛えている箇所では、繊細にして、冴え冴えとした音楽が奏で上げられている。硬質でありつつも、しなやかでもある。キリっとした柔らかさ、とでも表現できるようなニュアンスが秘められている。
そんなこんなによって、全編を通じて、研ぎ澄まされた感性に裏打ちされた音楽が鳴り響いているのであります。
そのようなホロヴィッツをサポートするワルターがまた、熱くて逞しくて、豊麗で輝かしい音楽を奏で上げてくれています。突進力が凄まじくもある。そういったことはまさに、ニューヨーク・フィル時代のワルターによる演奏の特徴だったと言えましょう。
しかも、こちらもまた、音楽のフォルムが崩れるようなことは全くありません。格調の高い音楽が鳴り響いている。凝縮度が頗る高いのですが、音楽を締め付けるようなことはなく、ふくよかさが感じられもする。
両巨匠がガッチリと組み合った凄演。
ホロヴィッツにはトスカニーニと共演した同曲の録音があり、そちらの方が広く知られていると思われますが、このワルター盤も、ホロヴィッツの個性とワルターの個性とが融合された、聴き応え十分な、素晴らしい演奏となっています。
お薦めです!!
なお、音質は、この時期のライヴ録音としては比較的クリアな音になっていて、この貴重な記録を味わうには、なんら支障はないと言えましょう。