ドホナーニ&ウィーン・フィルによるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲を聴いて
ドホナーニ&ウィーン・フィルによるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲(1979年録音)を聴いてみました。
ドホナーニによるキリッと引き締まった演奏ぶりも素晴らしいのですが、この演奏を頗る魅力的なものにしているのは、ウィーン・フィルであるように思っています。そう、ウィーン・フィルが奏でる極上の美音によって、なんとも美しいストラヴィンスキー演奏が実現されている。
ドホナーニによる音楽づくりは、シャープで、端正なもの。目鼻立ちのクッキリとしている、明晰な演奏となっています。理知的であるとも言えそう。この辺りは、いかにもドホナーニらしいところであります。
そのうえで、力感にも不足はない。生き生きとしていて、輝かしい。押し出しの良い演奏ぶりとなっていて、十分にパンチが効いていて臨場感に溢れてもいる。
それでいて、粗野であったり、凶暴であったり、といった演奏にはなっていません。なんともエレガントで、格調の高い音楽となっている。洗練味を帯びてもいる。そのうえで、抒情性の豊かさや、夢見心地に誘われるような美しさを湛えた音楽が鳴り響いている。
このような印象を強調してくれているのが、ウィーン・フィルの奏でる艶美な音であるように思えるのであります。音楽全体が、このオーケストラに特有の、艶やかで、煌びやかで、しかも、柔らかみやふくよかさを持った音たちによって敷き詰められている。
バランス感覚に優れた、音楽センス抜群な演奏。
≪火の鳥≫に独特の魅力を添えてくれている、なんとも素敵な演奏であります。