アンセルメ&スイス・ロマンド管によるラヴェルの≪クープランの墓≫と≪マ・メール・ロア≫組曲を聴いて

アンセルメ&スイス・ロマンド管によるラヴェルの≪クープランの墓≫と≪マ・メール・ロア≫組曲(1960,57年録音)を聴いてみました。

アンセルメならではの、玲瓏にして、冴え冴えとした感覚の強い、知的な演奏であります。そして、エッジが効いていて、克明で、精緻でもある。
ある種、整然とした演奏であると言えましょう。ひんやりとした肌触りが感じられる。そこに、この2曲が元来持っている「柔らかみ」や「暖かさ」が加わり、アンセルメの音楽づくりと絶妙な化学反応を見せてくれている。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
すなわち、古雅な風情であったりメルヘンチックな方向に偏ったりということなく、また、ふんわりとした音楽世界を追求するでもなく、客観性を持たせながら、精密に音楽を再現しつつ、作品のほうから親しみやすさのようなものが滲み出てくるような音楽が鳴り響くこととなっている、と。
そのうえで、ラヴェルの音楽が持っている色彩感も、過不足なく表されている。それは原色系のカラフルさではなく、そうかと言って、淡い色彩でもない。エッチング画でよく見られるような、輪郭線がクッキリとしていて、多彩な色が混ざり合うことなくお互いを引き立ててゆくようにして、その結果、鮮やかな色彩が浮かび上がってくるといった、そんな色彩感となっている。
しかも、例えば≪クープランの墓≫で顕著なように、均整の取れた音楽づくりの中から、リズミカルな運動性といったものが滲み出てくる演奏となっている。この辺りは、バレエ音楽を得意としていたアンセルメの真骨頂だと言えましょう。

独自の世界観を持っている、魅力的なラヴェル演奏。そんなふうに表現できそうな、素敵な演奏であります。