イタリア弦楽四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲第4,5番を聴いて

イタリア弦楽四重奏団によるベートーヴェンの初期弦楽四重奏曲集から第4,5番(1975,73年録音)を聴いてみました。

この両曲は、6曲から成るベートーヴェンによる作品番号18の弦楽四重奏曲の中で、私個人としましては、最も強い愛着を抱いている2曲であります。
初期の6曲のうち、唯一、短調で書かれた第4番。劇的で、デモーニッシュな性格を有した音楽となっています。そして、調性や、4つの楽章の構成がモーツァルトの弦楽四重奏曲第18番への近似性を持っている第5番。こちらは、とても快活な音楽となっている。

そのような2曲を、イタリア弦楽四重奏団は、爽快にして流麗に、そして、艶やかに奏で上げてくれています。もっと言えば、晴朗な音楽が鳴り響いている。そんな演奏ぶりは、いかにも、イタリアのグループならではものだと言えましょう。更には、暖かみや、しなやかさや、まろやかさを湛えていて、かつ、ふくよかさを持ち合わせた演奏となっている。
個別に見ていきますと、第4番では、この作品が元来持っている、明と暗や、激情と平安や、といった相克する世界が少なからず表されています。特に、情熱的(或いは激情的)な側面が。しかも、とても伸びやかで、かつ、屈託のない形で立ち現れてくる。
とは言いましても、全体的に、明朗な演奏となっています。清々しくて、晴れ晴れとしてもいる。心地よい風が吹き抜けてゆくような演奏ぶり。聴く者を暖かく包み込んでくれるような演奏。しかも、ムードに流されるようなことはなく、クッキリとした彫琢がなされてもいる。
そんなこんなによって、この作品が、実にチャーミングに鳴り響くこととなっている。
一方で、第5番では、冒頭から音楽が弾け飛んでいます。まさに、陽光が燦燦と降り注いでくる、といった音楽となっている。更には、喜びに溢れた音楽が鳴り響いてもいる。そのような演奏ぶりが、この作品の性格にピッタリ。
しかも、明瞭な音楽づくりをベースとしながら、クリアな音楽が奏で上げられていつつ、柔らかみを帯びている。そして、頗る伸びやかでもある。
そのような演奏によって、心弾む音楽が鳴り響くこととなっている。

イタリア弦楽四重奏団は、1970年代にベートーヴェンの弦楽四重奏全集を完成させていますが、初期・中期・後期では、圧倒的に、初期での作品において相性の良さが見出せるように思えます。それは、屈託のなさや、伸びやかさや、流麗さ、といったところに由来するのでありましょう。
そんなイタリア弦楽四重奏団によるベートーヴェンの初期作品の魅力が存分に詰まっている、ここでの2曲の演奏であります。