イザベル・ファウスト&アバド&モーツァルト管によるベルクのヴァイオリン協奏曲を聴いて

イザベル・ファウスト&アバド&モーツァルト管によるベルクのヴァイオリン協奏曲(2010年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

イザベル・ファウストらしい、怜悧な感性に貫かれた演奏であります。とても冴え冴えとしていて、精妙な演奏となっている。しかも、エッジが立っていて、明晰な音楽が鳴り響いている。そのようなアプローチが、この作品に誠に相応しい。
それでいて、熱くもある。そう、冷徹な音楽になっている訳ではないのであります。冷静に作品を捉えていつつも、生々しさのようなものが感じられる。充分に激情的であり、音楽する熱狂が宿っている。それ故に、「人間的な暖かさ」の滲み出ている演奏となっている。迸り出る情熱が感じられもする。
と言いつつも、やはり知的な印象が支配的な演奏であります。感情に溺れるようなところなど、微塵も感じられない。熱くありつつも、作品をちょっと突き放したところで音楽を奏で上げている、といった風情が感じられもする。その辺りのバランスが、絶妙であると言えましょう。
そのようなファウストに対して、アバドがまた、きめ細やかにして、しなやかな演奏ぶりで、しっかりとサポートしてくれている。

なんとも見事な、そして、頗る魅力的な演奏であります。