グリモー&ザンデルリンク&シュターツカペレ・ベルリンによるブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴いて

グリモー&ザンデルリンク&シュターツカペレ・ベルリンによるブラームスのピアノ協奏曲第1番(1997年ライヴ)を聴いてみました。
清澄で真摯で、そして、淀みのない演奏が展開されています。
この演奏での第1楽章の前半は、静的で沈痛な雰囲気に支配されていて、それでいて、ドッシリと構えていて、かつ、慈しみに満ちた音楽が鳴り響いている。そのような音楽表現になっているのは、恐らく、ザンデルリンクが、この演奏時に「感じていた」音楽の姿がそのようであったためなのでありましょう。そう、この演奏をリードしているのはザンデルリンクであるように思えるのであります。
この時、グリモーは28歳になる手前、ザンデルリンクは85歳。
そのようにして開始される演奏ではありますが、第1楽章も展開部に入ると、俄然音楽が熱くなってくる。そして、逞しさが増してくる。流動性も増してくる。彫りが深くなってもくる。
演奏が進むにつれて興が乗ってくる。この辺りは、いかにもライヴならではのことだと言えましょう。
その後の演奏はもう、変幻自在なものとなっています。曲想に応じて、時に逞しく、時に慈愛に満ちていて、時に情熱を迸らせ、時に可憐で繊細に、時に抒情的な美しさを湛えていて、と、表情を変えてゆく。或いは、ブラームスが20代の前半で書き上げたこの協奏曲に秘められている激情や、豊かな感受性の発露や、といったものを鮮やかに描き出してくれてもいる。
ここでも、音楽をリードしているのはザンデルリンクのように思えます。そのうえで、グリモーは、ピュアで真摯な姿勢で、音楽に潤いを与えながら、無垢で清らかなピアノを奏でてゆく。それでいて、充分なる情熱も秘められている。そう、グリモーの共感力の高さが、自ずと滲み出たものとなっている。とても一途なピアノ演奏の、その向こう側から。
音楽センスが抜群で柔軟性を持った若き才能と、熟練の名匠とが幸せな出会いをした、素敵な演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。





