クーベリック&バイエルン放送響によるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫抜粋を聴いて

 

クーベリック&バイエルン放送響によるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫抜粋(1964年録音)を聴いてみました。歌手にはエディット・マティス(ソプラノ)他が起用されていて、ドイツ語による歌唱となっています。
なお、序曲を含めて10のナンバーが抜粋されていて、ほぼ全曲が網羅されています。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

キリッとした凛々しさが前面に出ている演奏であります。
そのために、この作品が持っているメルヘンティックな雰囲気は薄らいでいると言えましょう。そのような音楽世界を描き上げるというよりも、純音楽としての魅力を示してくれている演奏。浮ついたところのない演奏ぶりが貫かれている。そして、楷書風の音楽が奏で上げられている。そんなふうにも言えるように思えます。
なるほど、堅苦しさのようなものが若干感じられる演奏となっています。もっと伸びやかで晴れやかであっても良いのではないだろうか。もっと、夢の世界に誘ってくれるように音楽になっていても良いのではないだろうか、もっと浮遊感のある音楽になっていても良いのではないだろうか、とも思える。
しかしながら、ここでの堅固で充実した演奏ぶりは、大いに魅力的であります。ズシリとした手応えを感じさせてくれる、見事な≪真夏の夜の夢≫になっている。そして、音楽の示してくれている佇まいは、頗る美しいものとなっている。
そのうえで、必要以上にストイックであったり、贅肉を削ぎ落としたシェイプアップされたものになっていたり、といったことはなく、適度なふくよかさが感じられる。運動性も充分。

底光りするような味わい深さを持っている、素晴らしい≪真夏の夜の夢≫だと思います。