チョン・ミョンフン&フランス放送フィルによるラヴェルの≪マ・メール・ロワ≫全曲を聴いて

チョン・ミョンフン&フランス放送フィルによるラヴェルの≪マ・メール・ロワ≫全曲(2007年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ここでのチョンの指揮は、とても動的で、生命力逞しいものになっています。起伏が激しくもある。目鼻立ちがクッキリとしてもいる。そう、全編を通じて、雰囲気に流されるといったところが微塵も感じられないのであります。音楽がテキパキと進められていて、毅然としてもいる。そのうえで、アグレッシブで、表現意欲の高い演奏が繰り広げられている。
しかも、適度な艶めかしさが感じられる。そのようなこともあって、フランス物ならではの空気感をシッカリと醸し出してくれています。色彩感が強く、音に色気がある。それは、剛毅な色気とでも呼べそうなものになっているのですが。
その一方で、例えば「眠れる森の美女のパヴァーヌ」や「美女と野獣」などでは、柔らかな抒情性がシッカリと表出されています。終曲の「妖精の園」では、情趣深くて、麗らかな輝きが放たれるような音楽が鳴り響いている。その辺りも含めて、彩りの鮮やかさや、エレガントな雰囲気を湛えた演奏になっていると言いたい。

全体的に見れば、チョンの豊かな音楽性を感じさせてくれるラヴェル演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。そのうえで、この瀟洒な雰囲気に包まれているバレエ音楽を、客観的に楽しむことができる演奏となっている。
ユニークな魅力を湛えていて、なおかつ、聴き応えも十分な、素敵な演奏であります。