ブロムシュテット&サンフランシスコ響によるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫を聴いて

ブロムシュテット&サンフランシスコ響によるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫(1992年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

端正で、風格豊かな演奏が繰り広げられています。
ケレン味が全くなく、誠実さに溢れている演奏となっています。大袈裟な表現や華美な音楽づくりとは懸け離れた演奏スタイルが採られている。しかも、堅固な音楽づくりが為されている。とは言うものの、堅苦しさは微塵もなく、自然体が貫かれている。そして、響きは誠に充実している。
やるべきことをやり尽くしている充実感いっぱいな演奏。そんなふうにも言えそう。そんなこんなによって、均整が取れていて、美しい佇まいを湛えている音楽が鳴り響くこととなっています。平衡感覚に優れている、とも言えましょうか。更には、清潔感が漂っていて、凛としてもいる。

なるほど、シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)との旧録音に比べると、オーケストラ自体の魅力は見劣りします。こちらの新盤では、飾り気のないニュートラルな響きを楽しむべきだと言えましょうか。
そのうえで、作品の魅力を等身大の形で味わうことのでる素晴らしい演奏となっている。ズシリとした手応えを備えている演奏だとも言いたい。
総合的にみますと、個人的にはSKD盤のほうにより一層の魅力を感じるのですが、このサンフランシスコ盤には、ブロムシュテットの堅実かつ充実した音楽づくりを掛け値なしで味わえる、といった魅力が備わっている。そんなふうに言えるように思えます。