ライナー&シカゴ響によるラヴェルの≪スペイン狂詩曲≫と≪道化師の朝の歌≫を聴いて

ライナー&シカゴ響によるラヴェルの≪スペイン狂詩曲≫≪道化師の朝の歌≫の2曲(1957年録音)を聴いてみました。
両曲ともにスペインにまつわる作品になります。

精緻にして明快な演奏であります。クッキリとした線で描かれてゆくラヴェル演奏。
しかしながら、無味乾燥とした演奏などではありません。実に生き生きとしている。音楽が思う存分に躍動しているのであります。過剰にならない範囲で鮮烈でもある。更に言えば、煽情的もある。
そして、色彩鮮やかでもある。その色合いは、淡い色調というよりも、原色系の明瞭で鮮彩なものとなっている。そんなこんなのうえで、エネルギッシュでドラマティックな音楽づくりをベースとしながら音楽は奏で上げられてゆく。
その一方で、≪スペイン狂詩曲≫の第1曲目では、この場面特有の気だるさもシッカリと表されている。似たようなことが、≪スペイン狂詩曲≫の最終曲の中間部にも当てはまる。しかも、その表情には、媚びを売るようなものが微塵も感じられない。そう、とても毅然とした演奏が繰り広げられているのであります。この辺りは、いかにもライナーらしいところ。
また、≪道化師の朝の歌≫では、十分に躍動していつつも、キリっとした表情をしているのが印象的。そのことによって、こけおどしな音楽にならずに、ピュアな美しさを獲得することになっていると言いたい。

全てが、鮮やかにピタッピタッと嵌って行っていると言えそうな演奏ぶり。その様は、実に痛快でもある。
なんとも見事な、なおかつ、独自の魅力を備えている、素敵なラヴェル演奏であります。