スターン&オーマンディによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いて

スターン&オーマンディ&フィラデルフィア管によるシベリウスのヴァイオリン協奏曲(1969年録音)を聴いてみました。

これは、スターン(1920-2001)が50歳になる直前の録音。
50歳前後という年齢は、ヴァイオリニストとしては、脂がのって、心技体が最も理想的にバランスされている時期だと言われることが多いように思えます。ここでのシベリウスも、まさにこのことが当てはまるような、極めて充実度の高い演奏だと言えそうです。そう、ここでのスターンの演奏は、気力の充実ぶりに目を瞠るものがある。
シベリウスとしては、ある意味「熱すぎる」かもしれませんが、演奏全体から醸し出されている充実感は半端ありません。

なんとも情熱的な演奏であります。それでいて、ガッシリとした構成感の貫かれている、堅牢な演奏でもある。
ここでのスターンの音楽づくりは、ある種、無骨なものだと言えましょう。周りに媚びない演奏ぶりだとも思います。そして、体幹がシッカリしている。骨太でもある。そのうえで、艶やかさやロマンティシズムにも不足はない。何より、とても情熱的である。作品に体当たりするような気魄が感じられる。と言いつつも、粗くなるようなことはない。そして、情緒に流されるようなことも無い。であるが故に、冒頭に書いたような、ガッシリとした構成感の貫かれている堅牢な音楽を、ここから聴き取ることができる。
そのようなスターンをサポートしているオーマンディの音楽づくりは、雄渾にして華麗なもの。スターンが醸し出してくれている艶やかさやロマンティシズムを、更に盛り上げてくれている。それでいて、ひたすらに華やかに音楽を奏でていっている訳ではなく、勇壮で骨太でもある。

中身の濃い音楽を聴くことができた。そのような思いを殊更に強く持つことのできる、見事な、そして、素敵な演奏であると思います。