デュトワ&モントリオール響によるファリャの≪三角帽子≫を聴いて
デュトワ&モントリオール響によるファリャの≪三角帽子≫(1981年録音)を聴いてみました。
目の覚めるような鮮やかさを持っている演奏であります。この作品が宿している、煽情的で、艶めかしい雰囲気がクッキリ描き出されている。
それでいて、下品な音楽になっている訳ではありません。むしろ、とても上品であると言えましょう。と言いますか、実にエレガントな音楽となっている。他の多くのデュトワによる演奏と同様に、美麗な音楽世界が広がっている。演奏全体から洗練味が感じられもする。オシャレな感覚に満ちてもいる。それらはまさに、魔法のよう。そう、この演奏でも、「デュトワ・マジック」が全開となっているのであります。
そのうえで、色彩感に溢れ、躍動感に満ちている。この作品特有のエキゾティックな彩りが豊かでもある。そして、ドラマティックにしてパワフルな演奏となっている。
オーケストラを鮮やかにドライブしながらの、手際の良い演奏であるとも言えましょう。しなやかであり、かつ、精彩感に満ちている。しかも、仕上げが誠に丹念で、得も言えぬほどに美しい音楽となっている。それは、「予定調和的な美しさ」と言えるかもしれません。しかしながら、力感に溢れ、音楽の表情が生き生きとしているために、「取り繕った美しさ」とは感じられない。とても刺激的であり、聴き手をグイグイと引っ張っていく力が横溢している。そして、聴き手の心を強く揺さぶる音楽となっている。
デュトワの音楽性の豊かさ、更には、作品のツボを押さえながらオーケストラを纏め上げてゆく力の確かさをまざまざと見せつけてくれている、見事な演奏であります。繰り返しになりますが、それはまるで魔法のよう。
そのうえで、≪三角帽子≫の魅力にも、存分に触れることのできる演奏となっている。
いやはや、なんとも素敵な演奏であります。