ブリュッヘン&18世紀管によるベートーヴェンの≪英雄≫(2011年 ロッテルダム・ライヴ)を聴いて

ブリュッヘン&18世紀管による2回目のベートーヴェン交響曲全集から≪英雄≫(2011年 ロッテルダムでのライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

颯爽としていて、清々しい演奏となっています。覇気があって溌剌としている。そのうえで、息遣いがとても自然。
その一方で、1984年から92年にかけてフィリップスに録音した1回目の全集と比べると、スケールの大きさが出ているように思います。しかも、決して出しゃばったスケールの大きさではなく、内側からふつふつと湧き上がってくるような気宇の大きさとなって、現れている。更に言えば、テンポが遅くなりつつも、熱量は増加しているように思える。
総じて、どっしりと構えた演奏ぶりとなっていて、かつ、力感も十分な演奏。古楽器による演奏でありながら、重量感の備わっていて、広壮なベートーヴェン演奏だと言えそう。そのような音楽づくりが、≪英雄≫での演奏に似つかわしい。
とは言いつつも、重苦しい演奏になっていたり、コッテリとした演奏になっていたり、といった訳ではありません。粘るようなことも微塵もない。冒頭にも書きましたように、清々しさが備わっている。とても新鮮だとも言えそう。そのような演奏ぶりの中から、逞しくて、躍動感に溢れていて、なおかつ、安定感たっぷりな音楽が鳴り響いてくることとなっているのであります。表情が生き生きとしてもいる。そういったことはまさに、ブリュッヘンならではの真摯で清新な音楽づくりの上に成り立ったものだと言え、この演奏に個性を与えてくれることとなっている。そして、この演奏を魅力的なものにしてくれている。

作品の魅力と、ブリュッヘンの魅力の双方をジックリと味わうことのできる、なんとも素敵な演奏であります。