ルイージ&フィルハーモニア・チューリヒによるシューベルトの≪ザ・グレート≫を聴いて
ルイージ&フィルハーモニア・チューリヒによるシューベルトの≪ザ・グレート≫(2019年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
オーケストラは、チューリヒ歌劇場の専属オケ。2012年よりチューリヒ歌劇場管弦楽団から現行の名称へと変更され、同時に、ルイージが音楽総監督に就任(在任期間は2012年~2021年)しています。
さて、ここでの演奏はと言いますと、ルイージらしい真摯なものとなっています。折り目正しくて、清潔感が漂ってもいる。
全体的に、音楽が肥大化するようなことはなく、キリっと引き締まった音楽が鳴り響いています。音の粒がクッキリとしていて、かつ、音楽が粘るようなことはない。音楽づくりにおいても、分離が良くて、明晰なものになっていると言いたい。
そのうえで、頗る颯爽としている。この点は全4楽章について当てはまりますが、速めのテンポで推し進めてゆく第2楽章において、殊更に顕著であります。
そのうえで、キビキビとしていて、律動感に溢れている。音楽が過度に豊麗になるようなことはないものの、決して痩せぎすなものになるようなことはなく、息遣いが豊かであり、伸びやかでもあります。そのようなこともあって、この作品に相応しい雄大さも、必要十分に備えた演奏となっている。また、シューベルトならではの歌謡性の豊かさや、細やかな抒情性や、といったものにも過不足が無い。
そんなこんなも、ルイージの音楽への誠実さと、音楽センスの豊かさ故だと言えましょう。
ルイージの美質がクッキリと刻まれている、素敵な≪ザ・グレート≫であります。
なお、全てのリピートが励行されています。この辺りも、ルイージの誠実な姿勢の一つの現れだと言えそう。
また、最終楽章の最後の音は、デクレッションドが施されています。