アンゲルブレシュト&シャンゼリゼ劇場管によるフォーレの≪レクイエム≫を聴いて

アンゲルブレシュト&シャンゼリゼ劇場管によるフォーレの≪レクイエム≫(1955年録音)を聴いてみました。
レコード会社との契約の関係でシャンゼリゼ劇場管という表記になっていますが、実体はフランス国立放送管であります。

薫り高い演奏となっています。
と言いましても、サクサクと音楽は進められていて、スッキリとした佇まいをしています。ただ、そのような中にも、なんとも言えない「儚さ」のようなものが感じられる。そう、決して輪郭がはっきりとしている訳ではなく、夢幻の世界が感じられる音楽が展開されてゆくのであります。
そのうえで、格調の高さが感じられます。この作品ならではの、瀟洒な雰囲気も十分。そう、とてもエレガントな演奏となっている。
しかも、暖かみがあって、柔らかみを帯びている。滋味深くもある。決してかしこまった演奏になっている訳ではないのですが、敬虔な空気が漂ってもいる。
また、管楽器を中心にして、オーケストラから鄙びた響きが聞こえてきて、「古き佳き時代」の薫りが伝わってもくる。ある種、ローカル色のようなものが出ていて、それがまた、この演奏に大きな魅力を添えてくれています。

今では、なかなか聴くことができそうにない、独特な雰囲気を持った演奏。しかも、そこから親しみ深さのようなものが感じられもする。
なんとも素敵な演奏であります。