クーベリック&バイエルン放送響によるヤナーチェクの≪グラゴル・ミサ≫を聴いて

クーベリック&バイエルン放送響によるヤナーチェクの≪グラゴル・ミサ≫(1963年録音)を聴いてみました。

峻厳で、かつ、彫りの深く、そのうえで、力強い演奏となっています。
音楽づくりは、克明を極めている。輪郭線がクッキリとしてもいる。そして、誠に鮮明な演奏となっている。表情が実に生き生きとしてもいる。
そのような演奏ぶりによって、端正でありつつも、逞しい生命力を宿した、鮮烈極まりない音楽世界を描き出してくれています。決して派手さを狙ったものではないものの、輝かしくもある。それは、「底光りするような輝かしさ」と表現するのに相応しいと言えよう。
全体を通じて、誠実で骨太な音楽づくりを基調としながら、力感に溢れていて、生命力豊かな音楽が奏で上げられています。
そこには、確固とした信念のようなものが感じられもする。クーベリックにとって、同郷の作曲家(詳細にみれば、ヤナーチェクはモラヴィア地方、クーベリックはボヘミア地方の出身なのですが)という敬愛と親愛の念を込めながらの。そして、クーベリックの豊かな人間性が伝わっても来る。
そんなこんなによって、この作品が、親しみを持って聴き手のほうへと近寄ってくる。そんなふうに言えそうな演奏となっています。あまり土俗性は感じられずに、洗練味の強い演奏となっている。明瞭でありつつも、コクが深くもある。

実に見事な、そして、聴き応え十分な、頗る魅力的な演奏であります。