クリスティ&レザール・フロリサンによるハイドンの交響曲第85番≪王妃≫を聴いて
クリスティ&レザール・フロリサンによるハイドンの交響曲第85番≪王妃≫(2022年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
清新さに溢れた演奏となっています。
しかも、生気に満ちた音楽が奏で上げられている。何と言いましょうか、息遣いの生々しさが感じられます。実際のところ、クリスティによるものなのでしょう、アインザッツの際に、息を思いっきり吸い込むような呼吸音が聞こえてくる。この辺りは、ライヴゆえのことでもあるのでしょう。
更には、速めのテンポが採られていることもあって、疾駆感に満ちたものとなっています。もっと言えば、勢いが感じられる。作品の息吹が生き生きと感じられ、伸びやかな演奏が繰り広げられている。躍動感に溢れてもいる。緩徐楽章である第2楽章も、かなり速めに演奏されていて、音楽がダブつくようなところが全くない。
そのような音楽づくりを基調としながら、これっぽっちの虚飾も含まれていない、純真さに溢れた演奏が展開されています。キリっと引き締まった演奏となっている。目鼻立ちがクッキリとしてもいる。そして、真摯で、清明な音楽が鳴り響いている。
そのうえで、ハイドンならではの人懐っこさにも不足はありません。親しみやすさや、愉しさや、慈しみや、いったものが滲み出てくるような演奏となっている。伸びやかで、晴れやかな演奏だとも言えそう。そんなこんなが、とてもチャーミング。
興味深かったのが、第3楽章のトリオ部。楽譜には記載のない、ファゴットによるカデンツァ風の経過句が挿入されていました。その部分の、なんと愛嬌のあったことでしょう。演奏全体が真摯な態度で貫かれているだけに、たまに見せてくれる「遊び心」が、とても魅力的に感じられるのであります。
聴いていて、気持ちがスッキリとしてくる演奏。
独自の魅力を備えている、素敵なハイドン演奏であります。