クーベリック&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪プラハ≫(1985年ライヴ)を聴いて

クーベリック&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪プラハ≫(1985年ライヴ)を聴いてみました。

端正であり、かつ、骨太な演奏となっています。逞しい生命力が漲ってもいる。
逞しい演奏ぶり、それはセッション録音におけるクーベリックでも感じられるのですが、ライヴになると、その辺りの目盛りが何割か増すことが多いように思えます。この演奏などは、そのことが顕著に現れていると言えましょう。
相手がモーツァルトであるが故に、むやみやたらと燃える、或いは、思いっきり力こぶを握りしめる、といったことをクーベリックはしていません。気品のある音楽づくりを基調としている。そのうえで、セッション録音と比べると、音楽の起伏を大きく採っていて、かつ、音圧を一段上げているように思える。そのために、とても骨太な音楽となっている。大いなる気魄が感じられもする。
更に言えば、ふくよかで、暖かみのある演奏となっている。それだけに、キリッと引き締まっていると言うよりも肉付きの良い演奏ぶりではありますが、凛とした雰囲気も漂ってくるところが、いかにもクーベリックらしいと言えそう。
そのうえで、音楽が存分に弾けています。身のこなしがしなやかで、息遣いが豊かでもある。更には、ライヴならではの感興の豊かさが備わっていて、活力のある演奏が繰り広げられている。
そのようなクーベリックの音楽づくりに対して、バイエルン放送響が、充実感タップリで、凝縮度の高い音を響かせてくれています。更に言えば、キビキビとした運動性や、機能性の高さを痛感できるオーケストラ演奏が展開されている。

ライヴにおけるクーベリックの魅力がギッシリと詰まった、聴き応え十分な素晴らしい演奏であります。