メータ&ロス・フィルによるR・シュトラウスの≪ドン・キホーテ≫を聴いて

メータ&ロス・フィルによるR・シュトラウスの≪ドン・キホーテ≫(1973年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

メータによる同曲の音盤では、マイスキーを独奏者に迎えて、ベルリン・フィルとDGレーベルに録音したものがメジャーなのかもしれません。とは言え、ロス・フィルと立て続けにR・シュトラウスの作品をDECCAに録音していた時期の中の1枚となる当盤もまた、なかなかに魅力的なものとなっています。
なんとも覇気の漲った演奏が繰り広げられています。それは、1970年代が世界の楽壇でメータが示していた勢いが、如実に表れたものだと言って良いでしょう。溌溂としていて、スリリングでもある。キレの良さが備わってもいる。
しかも、頗るゴージャスな響きで彩られている。それ故に、音楽の造りが、豊麗にして華麗なものとなっている。決闘の場面などでの劇性も、実に高い。
そのような演奏ぶりが、なんの衒いもなく成し遂げられているように思えて仕方がないのが、この時期のメータの特質だといえるのではないでしょうか。そのうえで、しなやかで、流麗な音楽が、屈託なく響き渡ってゆくこととなっている。息遣いが豊かで、恰幅の良い音楽が鳴り響いてもいる。
そのような音楽づくりが、R・シュトラウスの音楽には、誠に似つかわしい。

R・シュトラウスを聴く歓びを、ひいては、オーケストラ作品を聴く歓びを存分に味わうことのできる、素敵な演奏であります。