ギレリス&クリュイタンス&パリ音楽院管によるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を聴いて
ギレリス&クリュイタンス&パリ音楽院管によるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番(1955年録音)を聴いてみました。
クリュイタンスの演奏が収められた10枚組CDの中の1枚になります。
強靭なピアノを奏でてゆくギレリス。そのようなギレリスに合わせるべく、クリュイタンスもかなり直線的な音楽づくりを示しています。そして、両者ともにスリリングであり、かつ、煌びやかな演奏を繰り広げてくれている。
総じて克明な演奏となっているのですが、ロマンティックな雰囲気も充分に備わっています。ダンディズムの中に潜むロマンティシズム、といった感じで。しかも、決して力で押し切るような音楽にはなっておらずに、暖かみや、拡がり感を備えている。強靭でありつつも、弾力性が感じられもする。
そのうえで、雄弁であり、かつ、多彩で、ニュアンスの豊かな音楽が奏で上げられている。第2楽章の中間部でのギレリスの弾きっぷりなどは、目の眩むような華やかさを備えてもいる。第2楽章から第3楽章へ移行する箇所などは、誠に力強くて逞しい。そして、エンディングでは、壮麗な音楽が響き渡っているかと思えば、最後の最後では、畳み掛けるような苛烈さを持って締め括られている。
それにしましても、クリュイタンスによるラフマニノフというのも珍しいですが、ロシア音楽も得意としていただけに、その延長線上で捉えれば、なるほどと納得がいきます。逞しくありながらも、エレガントな味わいを湛えてもいる。
何はともあれ、ギレリスもクリュイタンスも、聴き応え十分な、素晴らしい演奏を繰り広げてくれています。両者の美質が融合した、素敵な演奏だと言いたい。