シューリヒト&シュトゥットガルト放送響によるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫を聴いて

シューリヒト&シュトゥットガルト放送響によるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫(1955年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

なんとも端正な演奏が繰り広げられています。
ここにあるのは、≪アルプス交響曲≫での演奏でよく見かけるような、音の洪水にドップリと身を浸すことのできる音楽ではありません。絢爛豪華に輝くような音楽でもない。キリッと引き締まっていて、質実で峻厳な音楽が鳴り響いている。凛然としてもいる。山頂の場面での演奏を聴いていると、ことさらに、その思いを強くします。
それでいて、エネルギーが不足している訳ではありません。それは、外に向かって放出されるような類ではなく、内側へと凝縮されてゆくようなエネルギーを宿した音楽となっている。そのうえで、こけおどしではない壮麗さが滲み出ている。嵐の中を下山する場面では、充分にドラマティックで、激烈な音楽となってもいる。

純音楽的な美しさを湛えている≪アルプス交響曲≫が、ここにはある。
独特な魅力を持っている、味わい深いR・シュトラウス演奏。いやはや、なんとも素敵な演奏であります。

なお、モノラルでのライヴ録音ですが、そのようなコンディションである割には音質がとても鮮やかであることがまた、嬉しい限りであります。録音状態は、R・シュトラウスの作品を聴く場合、重要な要素の一つですよね。
この頃の放送局による録音は、おしなべて優秀なものが多い。しかも、貴重な記録を、数多く残してくれている。有難いものであります。