グリュミオー&マルケヴィチ&コンセルトヘボウ管によるベルクのヴァイオリン協奏曲を聴いて

グリュミオー&マルケヴィチ&コンセルトヘボウ管によるベルクのヴァイオリン協奏曲(1967年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

幻想的でいて、鮮烈で、艶美な演奏が繰り広げられています。そのような演奏ぶりを通じて、2つの楽章で構成されているこの協奏曲の性格が、鮮やかに浮かび上がっている。
冒頭部分では、精妙にして、夢幻的な雰囲気が見事に立ち昇っています。そこに、グリュミオーならではの艶やかな美音が加わることによって、決して寒々とした音楽だとは感じられない。しかも、マルケヴィチが紡ぎ上げてゆく音楽は実に精巧なもので、粒立ちがクッキリとしている。
そのうえで、音楽が次第に緊張感を孕んだものとなっていく様が、明瞭な形で描き上げられている。ある種の厳格さが示されてもゆく。それでいて、暖かみのある音楽となっている。第1楽章は、活発な動きを見せる音楽ではないものの、動きには立体感が感じられる。
第2楽章になると、音楽に激しさが加わります。尖鋭な音楽にもなる。そのような性質の音楽は、マルケヴィチの得意とするところだと言えそうで、実際のところ、ここでの演奏でも鮮烈な音楽が鳴り響いています。とりわけ、この楽章での真ん中辺りは、激烈な音楽となっている。それだけに、その直後に現れる、祈りにも似た、敬虔で静謐な雰囲気を持つ箇所での神秘性とのコントラストが、実に鮮やか。
そのような音楽においても、グリュミオーは、優雅にして格調の高い音楽を奏で上げてくれていて、この音楽が、殺伐としたものになることから救ってくれています。最後の箇所などは、希望の光が差しているかのよう。そのことが、この協奏曲に、「ある天使の思い出に」という言葉が添えられていることをハッキリと認識させてくれることとなっている。

グリュミオーとマルケヴィチの美質がクッキリと現れていて、そのことによって、作品の魅力が鮮明に立ち昇っている、見事な演奏であります。