ケルテス&ウィーン・フィルによるシューベルトの交響曲第5番を聴いて

ケルテス&ウィーン・フィルによるシューベルトの交響曲全集から第5番(1970年録音)を聴いてみました。

爽快な演奏が繰り広げられています。清々しくて、溌剌とした音楽運びがなされている。
その一方で、普段のケルテスと比べると、キリッと引き締まっているように思えます。普段であれば、もう少しふくよかで伸びやかな音楽づくりを示してくれるように思われる。そこへゆくと、ここでは、かなり筋肉質でスリムなスタイルが示されています。その分、ストイックな性格を帯びているように感じられる。
それゆえに、情緒に流されるようなことはなく、ある種の直線的な音楽が鳴り響いています。なおかつ、堅固さを備えた演奏となっている。と言いましても、決して堅苦しいものではなく、充分に流麗。そして、凛々しくもある。
更に言えば、シューベルトならではの詩情の豊かさや、歌心にも不足はない。
そこに、ウィーン・フィルの美麗な音が加わる。普段のウィーン・フィルと比べると豊麗さは薄く、むしろ精悍な雰囲気を漂わせていますが、それでもやはり、ウィーン・フィル。このオケならではの、しなやかで柔らかくて優美な音たちで、音楽は敷き詰められてゆく。

ケルテスとしては、少し異質な演奏だと言えるかもしれません。
しかしながら、ケルテスの音楽センスの豊かさが充分に感じられる、聴き応えのある、素敵な演奏であると思います。