ザンデルリンク&ベルリン響によるシベリウスの交響曲第3番を聴いて

ザンデルリンク&ベルリン響によるシベリウスの交響曲第3番(1970年録音)を聴いてみました。

なんとも格調の高い演奏であります。
ハッタリのない、誠実さに溢れている演奏。キリっとしていて、凛々しくもあります。
そのうえで、逞しい生命力に溢れている。これ見よがしに力で押すようなことは微塵もなく、大地に根を張ったような演奏ぶりと言いますか、どっしりと構えたうえで、壮麗な音楽が鳴り響いている。大袈裟でない範囲で、壮大でもある。とりわけ、曲の最後の箇所での昂揚感は見事であります。それは、作品の内側から自然と膨らんでゆくような壮大さだとも言えそう。とても雄渾でもある。そのような音楽づくりが、シベリウスの音楽に誠に似つかわしい。

全編を通じて、ピュアな音楽美に満ちています。息遣いが自然で、虚飾のない演奏ぶりとなっている。それはもう、気品が漂ってくるような演奏。
そのうえで、輪郭がはっきりとしていて、彫りが深い。端麗で、一点の曇りもなく澄み切った音楽となっている。凝縮度が高くもある。それでいて、堅苦しさは微塵も感じられず、聴き手を包み込むような優しさに溢れている。典雅であるとも言いたい。ふくよかでまろやかな音楽となっていて、滋味深くもある。

味わい深さや、懐の深さが感じられる、素敵な素敵な演奏。
ザンデルリンク&ベルリン響によるシベリウス、忘れかけられている存在と言えるかもしれませんが、忘れられるにはあまりにも勿体ない素晴らしいシベリウスであります。