ムター&プレヴィン&シュターツカペレ・ドレスデンによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いて

ムター&プレヴィン&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシベリウスのヴァイオリン協奏曲(1995年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ムターならではの、妖艶で情熱的な演奏であります。雄弁にして、豊饒な演奏ぶりが示されている。適度に煽情的でもある。
しかしながら、普段の彼女の演奏ぶりに比べると、キリっと引き締まったものとなっているように思えます。普段のムターであれば、もっとゴージャスでグラマラスな音楽づくりが披露されていたのではないだろうか、と思えるのです。この辺りは、プレヴィン&SKDと組んでいる、というところに依るのかもしれません。とりわけ、オケがSKDであるというのが、大きな要因になっているではないでしょうか。
そう、ここでのSKDの響きは、このオケならではの清潔感に満ちたものとなっている。気品に溢れている。キリっと引き締まってもいる。そのようなオケの音が鳴り響いている中で音楽を奏でているために、ムターもSKDの側に寄っていった。そんなふうに思えるのであります。
プレヴィンの、誠実であり、かつ、充分にシンフォニックで劇性を持たせた音楽づくりもまた、ここでのムターの演奏ぶりにピッタリだと言えそう。

今のところ、ムターがSKDと共演した正規録音は、この音盤だけのはずです。
ムターを聴くにあたって、とても興味深い1枚。そんなふうに言えるように思えます。