トスカニーニ&NBC響によるブラームスの交響曲第2番を聴いて
トスカニーニ&NBC響によるブラームスの交響曲第2番(1952年録音)を聴いてみました。
トスカニーニの演奏の特徴、それは、明晰にして明快な音楽づくりにあるように思います。虚飾を施さずに、音楽を「あるがまま」に現実の音に変えてゆく。そのために、奏でられる音楽は、極めて客観性が高い。すなわち、アポロン的な性格を帯びていると言えましょう。
その一方で、その音楽は頗る情熱的で激しく、鮮烈であり、そのうえ、ロマンティックでもあります。そして、実に輝かしい。歌謡性に溢れていて、情熱的でもある。感情のほとばしりが、極めて高くもある。すなわち、ディオニソス的な性格を宿しているとも言えましょう。
その両者が、矛盾することなく両立している。そのために、均整が取れていながら、激情的な音楽が鳴り響くことがしばしば。
しかも、音楽への責任感の強さがヒシヒシと伝わってくる。妥協を許さずに、音楽を丹念に磨き上げ、そこに情熱を注ぎ込めてゆくのに徹していたことは、そのことを如実に物語ってくれています。
クレンペラーはトスカニーニのことを「指揮者の中の王」と讃えていましたが、その言葉は、トスカニーニにはとても似つかわしく思えます。
この演奏を聴いていますと、改めて、そのような事柄が頭の中を駆け巡りました。ここでは、上に書いたことがそのまま当てはまる演奏が繰り広げられていますので。
端正でいて、明快であり、輝かしくて、熱い。音楽が、そこここで躍動している。昂揚感が頗る高くもある。そして何よりも、歌謡性に満ち溢れている。このような性格は、この交響曲が根源的に備えているものだと言えそうで、それだけに、トスカニーニと作品とが渾然一体となっている姿を、ここに見出すことができる。
トスカニーニの真骨頂を見ることのできる、端麗でありつつも壮絶を極めている、見事な演奏であります。