ヨッフム&シュターツカペレ・ドレスデンによるハイドンの交響曲第95,98番を聴いて
ヨッフム&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるハイドンの交響曲第95,98番(1967年録音)を聴いてみました。
ヨッフムによるハイドンの交響曲と言えば、1971-73年にロンドン・フィルと録音した「ロンドン・セット」全12曲がよく知られており、「ロンドン・セット」の代表盤の一つと目されるほどの素晴らしい演奏が揃っていると考えています。一方で当盤は、その数年前に録音されたSKDとの共演盤になりますが、こちらでも、実に魅力的な演奏が繰り広げられています。
この演奏を特徴づけているもの、それはSKDの清潔感溢れる典雅な響きにあるのではないでしょうか。これはもう、惚れ惚れするほどに美しい。
ただ単に響きが美しいだけでなく、音楽が示している佇まいがまた、実に美しい。キリッとしていて、端然としている。気品に満ち溢れている。しかも、これみよがしに自らに備わっている「美」をひけらかすのではなく、ごくごく自然に「美しさ」が滲み出てきている、といった風情が感じられます。
オーケストラというものが示し得る極限の「美」がここにある。そんなふうに言いたくなります。
SKDが、そのような「美」を築き上げ得たのは、ヨッフムに依るところが大きいと言えましょう。奇を衒ったところが一切無い真摯なアプローチで、ハイドンが描き上げた音楽世界を忠実に、そして誠実に、再現しようとしているヨッフム。その結果として、端正にして、伸びやかな音楽が響き渡ることとなっています。生命力に溢れてもいる。そんなこんなの全てにおいて、バランス感覚に優れている。そのようなヨッフムによる音楽づくりへのSKDメンバーの共鳴が、前述したような「美」の発顕を現実のものとしたのでありましょう。
全体的にキビキビとしていて、何もかもが充実し切っている絶美の音楽が鳴り響いている演奏。しかも、頗るチャーミングでもある。
実に立派な、そして、途轍もなく魅力的な演奏であります。