ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫を聴いて
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫(1962年録音)を聴いてみました。
壮絶な演奏であります。
金管楽器、とりわけトランペットの周囲を切り裂くような強奏の凄まじさは異常だと言えましょう。ときに限界を超えて、音を外すこともあるのですが、総じて身の毛のよだつような迫力が生まれています。音の洪水の、更にその上から音楽が迸り出てくるような熾烈さが感じられる。
これに比肩できる体験は、ライナー&シカゴ響による≪家庭交響曲≫くらいなのではないでしょうか。
普段は、厳格な音楽づくりを見せることの多いムラヴィンスキー。ここでもその要素が皆無かと言えば、必ずしもそうとは言い切れないのですが、厳格さよりも「音楽の奔流」を優先させているように思えます。
しかしながら、シッカリと手綱を引いているのは間違いないと言えましょう。凄絶なドラマが展開されてゆきながらも、音楽が暴走したり、乱れを見せたり、といったことはない。しかも、或る種の「気高さ」や、純粋なる音楽美が感じられもする。
更に言えば、とても壮麗でもある。とりわけ、山頂の場面は、崇高な雰囲気さえ漂ってくるほど。
そのうえで、贅肉を削ぎ落とした音楽が鳴り響いていて、筋肉質でもある。しかも、音楽が思う存分に鳴り切っていて、R・シュトラウスならではのロマンティシズムにも不足はない。
紛れもなく爆演であるのですが、それは、強い意志に貫かれた「高貴な爆演」と言いたくなるような演奏。
いやはや、なんとも凄まじい演奏であります。そして、格別な魅力を備えている演奏であります。