リヒテル&マタチッチ&モンテカルロ歌劇場管によるグリーグのピアノ協奏曲を聴いて

リヒテル&マタチッチ&モンテカルロ歌劇場管によるグリーグのピアノ協奏曲(1974年録音)を聴いてみました。

骨太で逞しい演奏であります。なんとも剛毅でもあります。このことは、リヒテルのピアノにも、マタチッチの指揮にも当てはまる。
全編を通じて、猛々しいまでの馬力に溢れています。それはもう、尋常ならざるほどに。
この協奏曲の出だしは、もともとが鮮烈なものとなっていますが、この演奏は、雷鳴と共に閃光が走るかのように開始されます。その衝撃の、なんと強いこと。

実に力強い打鍵に支えられている、ここでのリヒテルの演奏。そこから、強靭で、壮麗で、気宇の大きな音楽が紡ぎ出されてゆく。どっしりと構えた演奏ぶりで、風格豊かでありつつも、頗る煽情的でもある。しかも、絢爛たる華麗さの備わった演奏となっている。眩いまでのピアニズムを、ここに窺うことができます。
その一方で、詩情性の豊かさにも不足はありません。硬質な響きでありつつも、潤いやまろやかさにも欠けていない。
実にエネルギッシュで、ダイナミックで、スリリングで、ブリリアントで、しかも、ロマンティシズムに溢れている演奏ぶりだと言えましょう。

そのようなリヒテルをサポートしているマタチッチもまた、なんとも逞しくて、スケールが大きい。第1楽章での提示部で、ピアノがひとしき奏で上げた後での、オーケストラによる演奏の、なんと勇ましいこと。グイグイと押してゆくような音楽が展開されています。このことは、それ以降の多くの箇所にも当てはまる。
それでいて、ロマンティックな音楽が切々と奏で上げてられている。ダイナミックな語り口でありつつも、陶酔感が大きくて、夢想的でもある。第2楽章では、実にデリケートな音楽づくりが為されてもいる。

かなり、カロリーの高い演奏だと言えましょう。グリーグの演奏としては、逞し過ぎると言うべきなのかもしれません。しかしながら、グリーグによる作品の中では、頑健さを秘めている音楽であるだけに、このような演奏ぶりを作品はシッカリと受け止めてくれている。しかも、グリーグならではのロマンティシズムが、随所に感じられる演奏となっている。ここでは、その振れ幅が途轍もなく大きくなっている。
規格外な魅力を蔵している、素晴らしい演奏。そんなふうに言えるように思えます。