ロストロポーヴィチ&ベルリン・フィルによるチャイコフスキーの≪眠りの森の美女≫と≪白鳥の湖≫を聴いて

ロストロポーヴィチ&ベルリン・フィルによるチャイコフスキーの≪眠りの森の美女≫と≪白鳥の湖≫の組曲(1978年録音)を聴いてみました。

チャイコフスキーのバレエ音楽に相応しい、絢爛豪華たる世界が広がっています。煌びやかにして、耽美なまでにロマンティック。そのロマンティシズムは、誠に健康的なものだとも言えましょう。そう、壮健なロマンティシズムが、ここにはある。
しかも、実にシンフォニックな演奏となっている。特に≪眠りの森の美女≫において顕著なのですが、「音の洪水」にドップリと身を浸す快感を満喫することができる。
全編を通して、骨太で、ダイナミックな音楽づくりによる、逞しさに溢れた演奏が繰り広げられてゆく。屈強な演奏だとも言えそう。そのうえで、ベルリン・フィルの艶やかにしてゴージャスなサウンドの威力も相まって、実に壮大で華麗な音楽となっているのです。重厚感があって、スケールが大きくもある。
剛健でありつつも、しなやかで、艶美でもある。この辺りなどはまさに、ベルリン・フィルに依るところが大きいと言えましょう。
しかも、奔放たる音楽の流れが、この演奏から感じられる。音楽が、地響きを立てながら突き進んでゆく、そのような風情すら感じられる演奏が展開されている。

チャイコフスキーのバレエ音楽に触れる歓びを最大級に感じることのできる、実に見事な、そして頗る魅力的な演奏となっています。