ショルティ&シカゴ響による第1回目のベートーヴェン交響曲全集から第7番を聴いて
ショルティ&シカゴ響による第1回目のベートーヴェン交響曲全集から第7番(1974年録音)を聴いてみました。
ショルティ&シカゴ響によるベートーヴェンと言えば、パワーに任せて力で押し切る演奏、大袈裟な演出が施されている演奏、というイメージを抱く方が多いのではないでしょうか。力でねじ伏せるようなベートーヴェン演奏。或いは、機能的な要素のみを追求し、無機質なベートーヴェン演奏になってしまっている、というふうに想像される方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、私は、決してそのようには捉えていません。むしろ、頗る誠実で、充実感たっぷりな演奏が繰り広げられている。
更に言えば、ここで聴くことのできる演奏は、スタンダードなベートーヴェン像を打ち立ててくれている。そんなふうにも思えます。
なるほど、この第7番の演奏は、剛毅で、気力が漲っていて、覇気に満ちたものとなっています。大きな起伏が取られていて、とても力強い。精緻で、技術的な巧さが際立っている。この辺りは、いかにもこのコンビらしい演奏ぶりだと言えるかもしれません。
それでは、単に外面的に見栄えの良い演奏であるのかと言えば、さにあらず。ここに揃っている演奏家たちの卓越した技術をもってして、華美な効果をもたらそうと目指しているのではなく、ましてや、力でベートーヴェンをねじ伏せようというのでもない。彼らは、ベートーヴェンの作品が持つ充実した内面を明瞭に再現してゆくことに専心している。そんなふうに思えてなりません。その演奏ぶりは、誠に誠実でもある。そして、実に立派なベートーヴェンが鳴り響いている。
そのうえで、音響的にも充実感たっぷりで、聴いていて、誠に心地が良い。
全体的に毅然としていながら、変に気負っているようなことは微塵も感じられません。ただひたすらに、作品が宿している生命力を忠実に表出してゆこう、といった気概がヒシヒシと感じられる演奏が展開されている。
なんとも充実度の高い演奏であります。有機的で充実した響きに敷き詰められている。しかも、虚飾のないベートーヴェン演奏が、ここに繰り広げられている。
ベートーヴェンを聴く充足感をとことん味わうことのできる見事な演奏であります。
なお、ショルティ&シカゴ響によるベートーヴェンの交響曲、1980年代に録音した2回目の全集のほうが、まろやかでふくよかで、洗練された流麗な演奏になっているように思われ、そちらも魅力的でありますが、個人的には、この1回目の全集での質実剛健な音楽づくりのほうに、より一層強く惹かれます。