ジョン・ウィリアムス&バレンボイムによる、ロドリーゴの≪アランフェス協奏曲≫とヴィラ=ロボスのギターと小管弦楽のための協奏曲を聴いて

ジョン・ウィリアムス&バレンボイム&イギリス室内管による、ロドリーゴの≪アランフェス協奏曲≫とヴィラ=ロボスのギターと小管弦楽のための協奏曲(1974年録音)を聴いてみました。

自在感に満ちた演奏であります。ニュアンス付けが細やかで、かつ、豊饒な音楽となってもいる。
それでいて、濃厚に過ぎるような音楽にはなっておらず、爽やかでもあります。とは言えやはり、サラリと流すような箇所は皆無で、常に深い情感が込められている。
そう、表現意欲に満ちた演奏になっているのであります。とても雄弁で、逞しくて、彫り下げ方が深い。しかも、颯爽としていて、小気味よくもある。全体を通じて、実に才気煥発な演奏となっています。そのうえで、目が眩まんほどに鮮烈でもある。そんなこんなが、作品に(或いは、曲想に)しっかりと寄り添いながら進められてゆく。それ故に、作品との間に齟齬が全く感じられない。

ロドリーゴでは、流麗かつ開放的で、瀟洒な演奏が展開されています。第2楽章では、カラッと乾いた「憂い」が存分に感じられる。基本的にはスマートでありつつも、適度に情念的でもある。
ヴィラ=ロボスでは、より激情的な音楽世界が広がっています。色彩感に溢れた演奏が繰り広げられている。
全体的に、スペイン色や南米色が、しっかりと表された演奏となっています。ただ、それは、作品自体が本来的に有している味わいでもありましょう。
それよりも、ここでの演奏は、もっと汎世界的な性格を表出しようとしているように思えます。純音楽としての音楽世界を。そして、その目論見は、見事な形で実を結んでいるように思うのであります。

聴き応えの十分な、そして、なんとも素敵な演奏であります。