カラヤン&ベルリン・フィルによるシェーンベルクの≪浄夜≫を聴いて
カラヤン&ベルリン・フィルによるシェーンベルクの≪浄夜≫(1973年録音)を聴いてみました。
精緻にして、妖艶な演奏であります。そして、滑らかでありつつ、重厚な演奏でもある。
仕上がりが実に丹念。であるからこそ、移ろいゆく色彩がクッキリと表されることとなっている。いや、「クッキリと」と言うのとはちょっと違う。色と色との間に、明瞭な境界はないように思える。そう、グラデーションのかかった色彩の変化によって描かれてゆく、といったほうが適切かもしれません。
音楽の流れもまた、凹凸なく滑らかそのもの。そのために、低音が効いていてシッカリとした土台の上に奏で上げられているのですが、音楽が重苦しくなるようなことはない。そう、頗る流麗な音楽となっているのであります。
そのうえで、充分にドラマティックでエネルギッシュ。そして、この作品に相応しいロマンティシズムに溢れている。それはもう、妖しい光彩が放たれている、と言いたくなるほど。
そのような演奏ぶりによって描き上げられてゆく音楽世界は、ウットリしてくるほどに美しい。
カラヤン美学の結晶を見るかのような演奏。しかも、この作品の魅力を存分に描き尽くしてくれている演奏になっているとも言いたい。
なんとも素敵な演奏であります。