ブロムシュテットを偲んで、シュターツカペレ・ドレスデンとのベートーヴェンの≪英雄≫を聴く

ブロムシュテットの訃報が入ってきました。享年99。
そこで、その死を悼んで、本日はブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるベートーヴェンの交響曲全集から≪英雄≫(1976年録音)を聴いてみました。第2楽章が「葬送行進曲」だということもあって。

ブロムシュテットが、我が国で注目を集めることとなったきっかけは、1975年から1980年にかけて制作された、SKDとのベートーヴェンの交響曲全集だったと言えましょう。その機運に乗っていると言えそうな1981年に、N響に初登場した。
なお、この≪英雄≫は、最初に第7番が録音された後の、当全集の第2作目でありました。

さて、ここでの演奏でありますが、ブロムシュテットならではの、堅実で、構成感の高いものとなっています。そのうえで、優美さを備えている。この辺りは、SKDの響きに依るところが大きいようにも思えるのですが。
更に言えば、力み返ったところの全くない演奏が繰り広げられています。それ故にとも言いましょうか、全く居丈高な音楽となっていない。それよりも、この作品が美しく響くためにはどのように演奏すればよいのか、といったところのみに焦点を当てているような演奏だと言えそう。であるだけに、端正にして誠実な演奏となっている。
と言いつつも、ひ弱な演奏になっている訳ではありません。凝縮度が高く、響きは充実感がいっぱい。この作品が持っているスケールの大きさが、巧まずして表されている。それでいて、威圧的なところは微塵もないのであります。キリリと引き締まっていて、格調が高くて、純美な音楽が、奏で上げられることとなっている。
しかも、第1楽章の終結部などでは、大仰にならない範囲で、昂揚感の高い音楽が鳴り響くこととなっている。第3楽章のスケルツォでは、推進力に満ちた音楽が奏で上げられている。そして、最終楽章では、その両者が融合されたかのようにして、推進力に満ちていて、かつ、昂揚感の高い音楽が響き渡ることとなっている。

ところで、「葬送行進曲」でありますが、沈痛であったり、勇壮であったり、劇的であったり、といったところの殆どない演奏となっています。そういった、なにがしかの性格付けを施すことよりも、純音楽的な美しさを前面に押し出そう、といった意図が感じられる。しかも、構成感の堅固さを加えていきながら。であるが故に、決して軽い音楽にはなっていない。
壮絶感や悲壮感を伴わない「葬送行進曲」。まさに、天寿を全うしたと言って良さそうなブロムシュテットを偲ぶに相応しい「葬送行進曲」だと思えてなりませんでした。

長きにわたって、数多くの素晴らしい演奏を届けてくれたこと、いくら感謝しても感謝し切れません。
心より、ご冥福をお祈りいたします。