トスカニーニ&フィルハーモニア管によるブラームスの交響曲第1番を聴いて

トスカニーニ&フィルハーモニア管によるブラームスの交響曲第1番(1952/9/29ライヴ)を聴いてみました。
これは、1952年の9月から10月にかけてロンドンで催された、今では伝説となっているブラームスの交響曲全曲ツィクルスにおけるライヴ録音になります。

さて、この演奏を聴いての印象について。
NBC響を相手にした時のトスカニーニと比べると、切れ味の鋭さは小さいように思えます。その分、ふくよかさや、しなやかさが感じられる演奏となっている。そして、燦然たる輝かしさも少なく、重心の低い音楽づくりが為されていて、重厚さが強いように思える。と言いつつも、必要十分に輝かしいのではありますが。
そのうえで、熱気の籠った演奏ぶりが示されています。気魄が漲ってもいる。とは言いながら、トスカニーニにありがちな、猪突猛進するような演奏ぶりではありません。もっとも、最終楽章の終結部では、猪突猛進ぶりが赤裸々な形で現れていて、大きな昂揚感を築くこととなっているのですが。
(多くの演奏において見せてくれる「猪突猛進」ぶりは、トスカニーニの演奏が備えている魅力の源泉の一つになっていると、私は感じています。)
また、テンポもさして速いという訳ではなく、現代の耳からするとむしろ遅めだと感じられる箇所も多い。それでも、熱気ムンムンな演奏となっている。ちょっとしたフレーズの中に込められるエネルギーの量が、頗る大きかったりもする。その結果として、作品の内側から「熱」が噴き出してくる、といった音楽が鳴り響くこととなっている。
そのような演奏ぶりによって、ブラームス特有のロマンティシズムや、情熱やが、率直な形で表されてゆくこととなっている。
更に言えば、第2楽章において顕著であるように、トスカニーニならではの豊かな歌謡性が表されている。ニュアンスの細やかさが、端々で見受けられもする。そして、全曲を通じて、極端なまでの凝縮度の高さは示されていないにしても充分に毅然とした演奏が展開されている。

トスカニーニからすれば、共演回数の少ないオケを相手にしての「他流試合」であるからゆえの音楽づくりとなっているのかもしれませんが、それだけに、トスカニーニの音楽づくりや演奏への姿勢を知るうえで、貴重な記録だと言えるのではないでしょうか。そのような価値を見出すことのできそうな、興味深い1枚だと言いたい。
そんなこんなのうえで、この作品の魅力も存分に味わうことのできる、素晴らしい演奏であります。