カラヤン&ベルリン・フィルによるベートーヴェンの≪英雄≫(1984年録音)を聴いて

カラヤン&ベルリン・フィルによるベートーヴェンの≪英雄≫(1984年録音)を聴いてみました。
カラヤン&ベルリン・フィルのコンビはベートーヴェンの交響曲全集を正規録音では3回制作しています(カラヤン自身は、その前にフィルハーモニア管とも全集を制作している)が、これは、その最後の全集の中の1枚となります。
速めのテンポで、スタイリッシュに進められている演奏。颯爽とした音楽が鳴り響くこととなっています。スポーティーな演奏だとも言えそう。
しかも、颯爽としていながらも、重苦しくならない範囲で、重量感は十分。音圧の強さが感じられもする。
更には、流麗であり、かつ、壮麗でもある。とても輝かしい。そのような演奏ぶりが、この作品には誠に似つかわしい。とりわけ、最終楽章の長大なコーダ部は、昂揚感に満ちたものとなっていて、なんとも見事。
そして、カラヤンならではの滑らかさが際立っています。ゴツゴツとしたところが全くない。潤いに溢れていて、艶やかさに満ちている。その様はまさに、美麗であると言うに相応しい。この点については、第2楽章の葬送行進曲において、とりわけ顕著であります。特に、ちょうど真ん中辺りでの、最高潮に盛り上がった箇所において。それはもう、レガートによる演奏の極みだと言えそう。
そんなこんなの、「カラヤン美学」で覆い尽くされた≪英雄≫。しかも、それがあまり鼻に付かない(もっとも、これは、「私個人にとっては」という範囲でのことでありますが)。その理由は、先にも書きましたように、ここでの演奏ぶりが、≪英雄≫という作品にとって、誠に似つかわしいものだと思われるからでありましょう。
聴き応え十分な、そして、頗る魅惑的な≪英雄≫であります。





