マイケル・ティルソン=トーマス&ボストン響によるドビュッシーの≪映像≫を聴いて

マイケル・ティルソン=トーマス(MTT)&ボストン響によるドビュッシーの≪映像≫(1971年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

今年の4月に、81歳で亡くなったMTT。当盤は、そのMTTが27歳になる年の記録となります。
同時期にボストン響とは、≪春の祭典≫やチャイコフスキーの≪冬の日の幻想≫などの音盤も制作しており、これらDGレーベルへの一連のデビュー録音によって、MTTは一気にスターダムに押し上げられたと言って良いでしょう。
なお、同曲は、2014年にサンフランシスコ響とも再録音しています。MTTにとっては、思い入れの強い作品だったのでありましょう。

さて、ここでの演奏はと言いますと、克明で、鮮烈で、瑞々しくて、しかも生命力に溢れた逞しいものとなっています。しかも、頗る有機的で、かつ、豊潤な音楽が鳴り響いている。そんなこんなが、唖然とするほどに見事。
とてもアグレッシブなのですが、作品を破壊するかのような凶暴さが全くない。起伏に富み、ニュアンス豊かな音楽が展開されており、その全てが作品の魅力を語ることだけに向けられてゆく、と言えそう。更には、精緻で、音像がクッキリとしていて、劇的で激情的でありつつ、まろやかで、温もりにみちている。色彩もとても鮮やか。
これらの特徴を産み出せたのは、ボストン響の卓越した合奏力と、コクのある熟成された響きとの功績も大きいように思えます。

闊達であり、かつ、実直な演奏。そして、作品の魅力をストレートに味わうことのできる演奏。そこには、若きMTTの音楽性の豊かさが滲み出ているとも言いたい。
デビュー当初のMTTの魅力が詰まっている、なんとも素敵な演奏であります。