コーエン&ドホナーニ&クリーヴランド管によるモーツァルトのクラリネット協奏曲を聴いて

コーエン&ドホナーニ&クリーヴランド管によるモーツァルトのクラリネット協奏曲(1991年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ドホナーニ&クリーヴランド管のコンビは、1990年代の初頭にモーツァルトの後期6大交響曲集を制作しておりますが、同時期に、同オケの首席奏者をソリストに据えて、管楽器のための協奏曲や、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲なども録音しています。この演奏は、その中の一つとなります。

ここでの演奏はと言いますと、ドホナーニによる多くの演奏でも見られるように、精緻にして、凛とした表情をしたものとなっています。硬質な肌合いをしていて、キリリと引き締まった演奏ぶりだとも言いたい。
それ故に、気品があって、実に美しい佇まいをしています。清潔感に包まれてもいる。
そのうえで、息遣いが頗る自然。そして、伸びやかでもある。テンポは、中庸と言えましょうが、急速楽章ではどちらかと言えばやや速め。そのために、颯爽とした雰囲気が少なからず生まれている。
そのような結果として、誇張の全くない形で、等身大の作品像が描き上げられていると言えそうな音楽が響き渡ることとなっています。
そんなドホナーニによる音楽づくりをバックに、コーエンがまた、頗る実直な演奏ぶりを披露してくれています。こちらもまた、伸びやかにして、しなやかな演奏が繰り広げられている。
音色は、不純物を一切含んでいないと言えそうな、ピュアなものとなっている。音が均一に鳴り響いていて、手触りが滑らかであることも、特筆もの。
しかも、硬質な響きをしていて、音楽がキリっとした表情を湛えたものとなっています。この辺りは、クリーヴランド管というオケの体質に符合したものでありますし、ドホナーニの音楽上の志向とも合致する。そのため、全く齟齬のない演奏になっていると言いたい。
そのような中でも、第2楽章においては、夕映えのような美しさを湛えた音楽が奏で上げられていて、ジッと心に沁み渡るものとなっています。そして、ロンド形式が採られている最終楽章では、愉悦感に満ちた演奏が展開されており、こちらもとても印象的。

この協奏曲の魅力を、もっと言えば、モーツァルトの管楽器のための協奏曲作品の魅力を、タップリと味わうことのできる、なんとも素敵な演奏であります。